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2018.02.24

【テニスにおける体幹】

振られた時をはじめ、ストロークやボレー、サーブを打つとき、軸がぶれてしまう選手がいる。錦織選手はもちろんのこと、サッカー長友選手などの影響もあり、近年体幹のトレーニングが注目されていることから、ことさら「体幹がよわい」。と、言われることをよく耳にする。そもそも体幹とは何?!

「体幹」の定義は、医学界の人間においてもしばし異なる。ざっくりいうと、胴体部分で、身体の部位を指します。胴体部分は軸を構成する重要なパーツなので、軸がぶれる=体幹の問題?!と思っている人が多いのでは?と個人的に解釈している。要は体幹(胴回り)の筋力が弱いから軸がぶれるので、体幹のトレーニングをしてほしい。という具合だ。しかし、軸ブレが起こる=体幹の筋力が弱いからなのか?!と個人的には思っている。

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確かに、体幹だけでなく筋力が弱い事は、パフォーマンスの阻害要因になる事は間違いない。しかし、筋力トレーニングをし、筋力が向上すれば=問題が解決する。とはならない。特にジュニア低学年の選手においては、筋力で問題を解決しようというケースは少ないように感じる。肝心なことは、「身体の使い方」、である。ここでは、テニスにおける体幹の使い方、という事になる。腹筋や背筋を鍛えれば軸ブレが解消する?!それは果たしてどうなのか。

体幹をテーマに話せば、キリがないので、今回はある程度絞って言いたいと思います。体幹は身体の構造上、上半身と下半身の”中継地点”としての位置づけがあると思います。これは上半身や下半身に負荷がかかった時に、体幹部が如何に力を伝達するか?が、体幹部の重要な仕事と捉えています。

例えば、テニスをたくさん練習し、レベルが上がれば、スイングスピードは自ずと速くなります。その結果皮肉にも、スイングスピードが遅かった時より、身体の支えが強くないと、軸ブレの原因になってしまいます。テニス用語で言えば「手打ち状態」です。スイングスピードが上がっても、下半身の力が十分備わっており、その力を体幹を経由し、上半身に伝えることができければ、軸ブレは大きく改善できると思います。

この場合、「体幹の筋力」、というよりは、体幹部が如何にスムーズに力を伝達するか?という事に着眼します。筋力トレーニングは難しい言葉ですが、単間接運動というものを用いたメニューが多々あります。一つの動き(例えば肘を曲げる、膝を伸ばすといった具合)に対するトレーニングです。言い換えれば「点」の動きです。この「点」の動きをそれぞれ鍛え、その点と点をドッキングする作業が「コーディネーション」や「運動連鎖」と言います。この点と点をドッキングする時に、体幹部の力の伝達は必須です。そしてこの「体幹部の力の伝達」がうまくできておらず、軸ブレを起こしている選手が多いと思います。この場合、単純に体幹トレーニングをしても、軸ブレの根本改善にはならないでしょう。

テニスだけでなく、スポーツ選手のトレーニングを担当させてもらう場合、なるべくそのスポーツ特性を意識させた言い回しや、メニューを心がけております。

このブログにも動画を載せたかったのですが、容量が大きすぎてFacebookにあげます。(菅尾アスレティックトレーニングセンターのFacebookにアップしております)。例えばこのトレーニングは、上半身と下半身に負荷を与え、体幹をぶらさないように意識させたトレーニングになります。もちろんメニューは多々あるのでこれはあくまで一例です。

個人的に、テニス選手は片足軸のバランスが非常に重要と思っているので、下半身の付加として片足とバランスマット。上半身の付加としてチューブ。そしてペアで行うことで、ペアの力の加減次第で、急にチューブの負荷が変わるので、その結果負荷のかかり具合が不意に変わり、体幹のバランスをキープするのが非常に難しくなります。

こんな堅苦しい話は、全部をトレーニング中にはしませんが、トレーナー側として暗に意味し、選手には自動的に体幹の伝達能力やバランス向上を鍛えさせています。テニスは不意に逆を突かれるスポーツで、自分が意図しない負荷がかかった時に、如何に体幹のバランスが良いか、という能力は非常に大切な要因であると考えております。

勘違いを起こしたくないので、書いておきますが、体幹トレーニングが必要ではない、と言っているわけではありません。むしろ、すごく大切です。が、軸ブレ=体幹の筋力トレーニングで改善する。という訳ではない、という事を思ったので、今回のブログの内容にしました。少しでも役になってくれれば幸いです^^